【会社員エンジニア向け】副業でトラブルにならないために:就業規則の確認と会社への報告・申請ガイド
副業やフリーランスといった「自由な働き方」に関心を持つ会社員エンジニアの方が増えています。しかし、いざ「副業から始めてみよう」と考えたときに、多くの人が最初に抱える現実的な疑問や不安の一つに、「自分の会社は副業を許可しているのだろうか」「会社に報告する必要があるのか、どう伝えれば良いのか」といった、会社との関係性に関するものがあるのではないでしょうか。
本業を持つ会社員にとって、会社のルールを無視して副業を始めることは、後々予期せぬトラブルに発展するリスクを伴います。この記事では、会社員エンジニアの方が安心して副業の第一歩を踏み出すために、就業規則の確認から会社への報告・申請まで、具体的なステップと注意点について詳しく解説します。この記事を読むことで、会社との不要な摩擦を避け、スムーズに副業を開始するためのロードマップが得られるはずです。
なぜ副業開始前に会社のルールを確認する必要があるのか
会社員として働く上で、雇用契約や就業規則は非常に重要です。多くの企業には、従業員の労働時間や業務内容に関する規定が定められています。副業を行うことは、本業の勤務時間外とはいえ、会社が懸念するいくつかのリスクと関連する可能性があります。
主な懸念事項としては、以下のような点が挙げられます。
- 本業への支障: 副業に時間や労力を割きすぎた結果、本業のパフォーマンスが低下すること。
- 情報漏洩: 本業で得た機密情報や顧客情報を副業で利用したり、競合にあたる副業を行ったりすること。
- 会社の信用低下: 副業での活動が原因で、会社の評判や信用が損なわれること。
- 競業避止義務: 会社と競合する事業を行うことの禁止。
これらのリスクを避けるため、多くの企業は就業規則の中で副業に関する規定を設けています。規定に違反した場合、最悪の場合には懲戒処分の対象となる可能性も否定できません。安心して副業を続けるためには、まず自社のルールを正しく理解することが不可欠です。
自社の就業規則を確認する方法と判断のポイント
それでは、具体的にどのように会社のルールを確認すれば良いのでしょうか。確認すべきは、会社の「就業規則」です。
就業規則の探し方
就業規則は、労働基準法により従業員に周知することが義務付けられています。一般的には、以下のような場所で確認できます。
- 社内ポータルサイトや共有サーバー
- 人事部や総務部への問い合わせ
- 入社時に受け取った書類
就業規則全体を確認するのは大変ですので、「副業」「兼業」「兼職」「他の事業への従事」といったキーワードで検索してみるのが効率的です。
就業規則の主なパターンと判断のポイント
就業規則における副業に関する規定は、主に以下の3つのパターンに分かれます。
- 原則禁止: 例外的に会社の許可があれば認められるケースが多いです。「許可なく他の会社等の業務に従事してはならない」といった文言が見られます。
- 許可制(承認制): 会社に申請し、許可を得られれば副業が可能となるパターンです。許可の条件(本業に支障がないこと、競合しないことなど)が明記されている場合があります。
- 届出制: 副業を行う際に、会社に届け出るだけで認められるパターンです。会社の状況把握を目的としている場合が多いです。
- 原則自由(規定なし): 副業に関する明確な規定がない、または容認しているパターンです。ただし、規定がない場合でも、本業に著しく支障が出る場合や、会社の信用を損なうような場合は問題となる可能性があります。
これらの規定を確認し、ご自身の会社がどのパターンに該当するか、そして副業を行う上でどのような条件や手続きが必要かを把握することが第一歩です。規定が不明確な場合は、自己判断せず、後述する会社への確認や相談を検討しましょう。
会社への報告・申請は必要か?具体的なステップと注意点
就業規則を確認した結果、副業が「原則禁止だが許可制」あるいは「許可制」「届出制」となっている場合は、規定に従った報告や申請が必要です。
報告・申請が必要な場合の具体的なステップ
- 相談先を検討する: いきなり正式な申請ではなく、まずは直属の上司や人事部の担当者などに相談してみることから始めるのがおすすめです。非公式な場で感触を探ることで、会社側の懸念や手続きについて具体的な情報を得やすくなります。
- 副業の内容を整理する: 相談や申請の際には、どのような副業を行うのか、具体的に説明できるように準備しておきます。以下の点などを明確にしておくと良いでしょう。
- 副業の内容(例: Webサイト制作、技術ブログ執筆、プログラミング講師など)
- 想定される業務時間(例: 平日夜間、週末など)
- 想定される収入(具体的な金額が求められない場合もあります)
- 本業との関連性(競合しないか、情報漏洩のリスクはないかなど)
- 副業を行う理由や目的(例: スキルアップ、収入補填など)
- 申請書を作成する(必要な場合): 会社の指定する書式がある場合はそれに従います。書式がない場合でも、上記で整理した内容を簡潔にまとめた書類を作成し、提出します。申請書には、副業が本業に支障をきたさないこと、会社の信用を損なわないことなどを明記し、会社側の懸念を払拭するよう努める姿勢を示すことが重要です。
- 会社の判断を待つ: 申請後、会社は内容を審査し、許可・不許可の判断を行います。判断までに時間がかかる場合もあります。
会社への報告・申請の際の注意点
- 正直に伝える: 後から発覚した場合の信頼失墜リスクを避けるため、隠さずに正直に伝えることを基本とします。
- 本業への熱意を示す: 副業が本業に支障をきたさないこと、本業がおろそかにならないことを明確に伝えます。副業で得たスキルが本業にも活かせる可能性がある場合は、それをアピールするのも良いでしょう。
- 会社の懸念に配慮する: 会社がどのような点を懸念するかを想像し、それに対する具体的な対策や配慮を説明できるように準備します。
- 記録を残す: 誰に、いつ、何を相談・申請したか、どのような回答を得たかなど、やり取りの記録を残しておくことが望ましいです。
会社に隠して副業を行った場合のリスク
就業規則で副業が禁止されている、あるいは許可が必要なのに、会社に無断で副業を行った場合、以下のようなリスクが考えられます。
- 懲戒処分の可能性: 就業規則違反を理由に、訓告、減給、降格、場合によっては懲戒解雇といった処分を受ける可能性があります。裁判例では、副業が本業に具体的な支障を与えているか、会社の信用を傷つけているかなどが判断基準となりますが、リスクは存在します。
- 情報漏洩・競業による損害賠償請求: 副業で会社の機密情報を使用したり、会社と競合する事業を行ったりした場合、会社から損害賠償を請求される可能性があります。
- 税金・社会保険の問題: 会社に副業収入を知られたくない場合でも、副業収入が一定額を超えると確定申告が必要となり、住民税の金額から会社に知られる可能性があります(「特別徴収」から「普通徴収」への切り替えで回避できる場合もありますが、自治体や会社のルールによります)。
これらのリスクを考慮すると、会社のルールを確認し、必要な手続きを踏んでから副業を始めることが、長期的に安心して活動するためには賢明な選択と言えます。
円満に副業を始めるためのコミュニケーションのヒント
会社が副業に対して必ずしも肯定的でない場合でも、適切なコミュニケーションによって理解を得られる可能性はあります。
- 副業を行う目的を丁寧に説明する: 単に収入を増やしたいというだけでなく、「新しい技術を習得して自身の市場価値を高めたい」「異業種での経験を積むことで視野を広げたい」など、自己成長やキャリアアップに繋がる側面を強調することで、会社も前向きに検討してくれることがあります。
- 本業への貢献意欲を示す: 副業で得た知識や経験を本業に還元できる可能性を示唆したり、本業へのモチベーションが高まることを伝えたりします。
- 業務時間外に行うことを明確にする: 副業はあくまで所定労働時間外に行うものであり、本業の業務時間と重複しないことを約束します。
- 会社の懸念事項に対する配慮を具体的に伝える: 情報管理を徹底すること、納期管理をしっかり行い本業に穴を開けないことなど、具体的な行動計画を示します。
会社の状況や社風によって対応は異なりますが、一方的な主張ではなく、会社の立場や懸念にも配慮した対話を行うことが、円満な解決に繋がる可能性を高めます。
まとめ:リスクを理解し、計画的に一歩を踏み出す
会社員エンジニアが副業を始めるにあたって、就業規則の確認と会社への適切な報告・申請は、不要なトラブルを回避し、安心して活動するための重要なステップです。
まず、自社の就業規則で副業がどのように規定されているかを確認しましょう。そして、必要に応じて会社への報告や許可申請を行います。その際は、副業の内容を具体的に説明できるように準備し、本業に支障がないこと、会社の信用を損なわないことを丁寧に伝えることが大切です。
もし会社が副業に消極的な場合でも、対話を通じて理解を求める努力は価値があります。法的な側面では副業は原則自由とされていますが、会社との良好な関係を維持しながら進めるには、現実的な対応が求められます。
副業は、会社員としての安定を保ちつつ、自身のスキルを活かしたり、新しい分野に挑戦したりするための素晴らしい選択肢です。会社のルールを正しく理解し、計画的に準備を進めることで、安心して「自由な働き方」への一歩を踏み出すことができるはずです。この記事が、あなたの次なる一歩を後押しする情報となれば幸いです。